書評<素人でも自力で登記に挑戦してみよう!>

登記というものは、不動産取引に欠かせないアイテムです。

でも不動産取引なんて、普通人生に数えるほどしかしないものですから、関心がないという方が大多数だと思います。

ところで、皆様は「10万円あげるよ」という話には関心がありますか?全く裏がないとして、です。大多数の方が興味津々になるのではないかと思います。

実はこの登記、プロしか扱えないものではなく、素人でも扱えるもので、上手く使えば何十万円か得をすることができる魔法の紙切れなのです。

知識0から登記のやり方を学ぶ本は何冊かあるのですが、今日は私のイチオシである「自分で登記をする会1」をご紹介したいと思います。


時分で登記をする会1

著 熊谷雅人
日本登記研究会
企画・監修 河戸一雄
監修 司法書士K

目次
1.あらすじ
1.1.登場人物
1.2.第一話「滅失登記」
1.3.本の構成について
2.総評

1.あらすじ

1.1.登場人物

越智麻美
20歳の大学二年生。面倒くさがりで思ったことがそのまま口にでる天然。「建物の滅失登記を自力でこなせ」というミッションを受け、「自分で登記をする会」を訪れる。実家は誕生日プレゼントにマンションを貰うほどのお金持ち。ただし本人曰く「普通」であまりその自覚はない。

吉宮芳樹
自分で登記をする会会長。法学部三年生。論理的かつ理知的な話し方をする。表情は固定で、メンバーもほとんど笑ったところを見たことがない。それは過去の苦い経験に起因するようだが…?

 

細江百合子
自分で登記をする会メンバー。ツインテール少女で、大学四回生にも関わらず小柄かつノーメイクのため中学生に見間違えられる。実家は建設業を営んでおり、建設関連の知識やコネは広く深い。

 

伏倉香苗
自分で登記をする会メンバー。経済学部三年生。人当たりの良い性格だが、好きな言葉は「減税」で税金のこととなると豹変し話が止まらなくなる。美人。

 

景山仁
自分で登記をする会メンバー。大学三年生。世界のバイヤー相手に戦う天才で、大学へはテストの時にしか来ない。

1.2.第一話 滅失登記

全てのエピソードを紹介すると長いし物語のネタバレになるので、本日は第一話の内容だけをかいつまんでご紹介します。

あらすじ

今年で20歳になる大学生、越智麻美は父親からの誕生日プレゼントを楽しみにしていた。今年は成人になる記念の年。きっと凄いものをくれるに違いない。心踊らせながら箱を開け中を覗きこんだ彼女だったが、中に入っていたのは二枚の紙だった。

一枚は「委任状」で一枚は「業者に頼らず滅失登記をやってみろ、でなきゃ今後プレゼントはやらん」という手紙。ショックを受け友人に愚痴る彼女だったが、そこで「自分で登記をする会」なるサークルが大学にあることを教えられる。

怪しみながらもそこを訪れた彼女は、3人のメンバー達と出会い、あれよあれよという間に新メンバーにさせられて、登記の世界に引きずり込まれていくのだった。

登記とは何か?

「それじゃあ、君がある土地について『その土地が誰のものなのか』とか『何に利用されているのか』とか知りたければどうする?」

「その土地に住んでいる人に訊きます!」

「ま、それで解決することも多いだろうけどね。例えば、土地の持ち主が他の人に土地を貸してたり、放置された土地で誰も住んでいなかったりすることもあるでしょ?」

「うぅ……。確かに……」

「だが、その土地の情報がちゃんと記録されていれば、調べることができる。実はこの国にはそういった不動産の情報を記録したものがある。その記録を登記記録という」

麻美達のお話は、登記の基本中の基本からスタートします。「登記とは何か?」「何故登記が必要なのか?」そして、登記が不動産の始まりから終わりまで関わり、不動産の仕組みがわかるものであると教わります。

ちなみに登記については、登記の対抗力と公信力をテーマに、本ブログでも別の記事で取り上げています。ご参考までに。

登記は自分でできるのか?

「でも、勉強しても登記って素人がやっちゃダメなんですよね?」

「登記は、土地家屋調査士や司法書士のような国家資格者に依頼して行うことが一般的なのね。でも実は自分で登記をするのが原則なんだよ。昔は、みんな自分でやっていたの。それが普通だったんだから」

そう言って香苗は、登記に必要なもの(紙・ボールペン・デジカメ)を集めます。こうして彼女は、自分で登記をする会のメンバーに、ボランティアで建物滅失登記を手伝ってもらうこととなりました。

建物滅失登記のやり方

「そこに書いてあるのが今回の滅失登記の場合に用意する書類だ」

◇建物滅失登記で必要な書類

1.申請書
2.滅失した建物の登記事項証明書
3.滅失した建物の建物図面・各階平面図
4.滅失した建物の存在した土地の地図もしくは地図に準ずる図面(公図)
5.建物滅失証明書
6.滅失した建物が存在したところまでの案内図
7.写真
8.代理権限証明書(委任状)

必要なものが「八つもある!」と文句を言う麻美でしたが、2・3・4は登記所で交付して貰ったものをそのまま受け取ればいいことと、8の委任状はもう持ってると指摘されます。

1.申請書
2.滅失した建物の登記事項証明書
3.滅失した建物の建物図面・各階平面図
4.滅失した建物の存在した土地の地図もしくは地図に準ずる図面(公図)
5.建物滅失証明書
6.滅失した建物が存在したところまでの案内図
7.写真
8.代理権限証明書(委任状) →OK

その後、芳樹はパソコンで登記所の場所を調べ、一行は東京法務局府中市局で2・3・4の書類を発行してもらいます。

1.申請書
2.滅失した建物の登記事項証明書 →OK
3.滅失した建物の建物図面・各階平面図 →OK
4.滅失した建物の存在した土地の地図もしくは地図に準ずる図面(公図)→OK
5.建物滅失証明書
6.滅失した建物が存在したところまでの案内図
7.写真
8.代理権限証明書(委任状) →OK

さらに、建物が滅失した現場に向かい6・7を、解体業者に連絡して5を受け取ります。そして芳樹が1.申請書の文書ファイルを開き、麻美が2.登記事項証明書の内容を書き写して、1.申請書を入手。


図1 登記申請書イメージ(出典:自分で登記をする会1)

最後に原本還付請求のため、追加でコピーを作成し、無事に麻美は「建物滅失登記」を完了することができたのでした。

1.3.本の構成について

この本はこのように、必要アイテムを一つずつ入手していくRPGのお使い形式で進みます。登記事項証明書を手に入れる時の収入印紙や、「住所」と「地番」の違いなど、予備知識のない人が躓くところも、麻美が読者に代わって質問してくれる親切設計なので、イメージもしやすくなっていると思います。

第一話「滅失登記」ののちに取り上げているテーマは、

第二話「ハウスメーカーの選び方」

第三話「建物表題登記」

第四話「保存登記・抵当権設定登記」

第五話「相続登記」

の全五話構成。

この後麻美は、自分で登記をする会に正式に入会し、これら不動産に関する様々なことを学んでいくことになります。

最終的に彼女たちは、不動産の相続を利用し限りなくブラックに近いグレーな商売をする悪徳業者とバトルすることになるのですが、はてさてどういった決着を見るのか?それは実際に読んで確かめてください。

2.総評

物語形式で非常にわかりやすくまとめられている本でした。

登記のやり方を淡々と並べるのではなく、住宅会社の選び方とか、物語の後半で、相続ビジネスにまで触れているところを見ても、家を持つ、持とうとしている人全員が読んで損の無い内容がまとめられていると言えるでしょう。勿論、淡々と整理されている本も理解の助けになりますが、登記の入門書としては最適な一冊ではないでしょうか?

(そうそう、作中に芳樹の「この社会を変える」という言葉に対し、悪役キャラが「誰もが同じことを口にし、そのまま何もできずに散っていった」と発言するシーンあるのですが、私はそんなことはないと思います。不動産関連のシステムだって日進月歩です。例えば、昔は登記がバインダー保管だったため、すり替えによる単純な詐欺も多数ありましたが、現在は電子化されてますし。建築確認申請も、実施率が半分に満たなかっただった時代から、業務が民間に解放された結果、ほぼ全ての新築が指定確認検査機関のチェックを受けるまでになりました。IT分野とか医療分野と比較すると亀の歩みですし、進歩する悪徳商法の手口を考えるとアキレスと亀のパラドクスではあるのですが…)

小説としてのクオリティについては、そこまで期待しないほうがいいと思います。登記を理解するのが主目的なので、正直あまりリアリティはないです。メンバーがみんなハイスペックですからね~、そうそうこんな大学生がいてたまるか!

惜しむらくは、売買時の所有権移転登記はノータッチだったことでしょうか?実際に、「所有権移転登記を自分でやりたい」と不動産屋に相談したらかなり嫌がられるとは思いますが、相場くらいは知っておいてもいいと思いますので。

といっても本書は「自分で登記をする会1」ですから、続編に期待したいところです。

おすすめ度: ★★★★★(学生:★★★★★)

更新履歴

2018/06/14 図1を挿入、人物紹介の一部の文を修正、各キャラの画像を挿入

広告


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください