<雑記>主要構造部の一種以上について行う「過半」の意味するところ

リフォーム工事においては、建築確認申請(以下、確認申請ないし申請)という手続きが必要な工事と、そうでない工事があります。

確認申請は、建物が建築基準法等に定められた基準に適合しているかどうか、チェックする仕組みなのですが、リフォームといっても「照明の交換」とか、「壁紙の張替え」とか、小規模な変化まで役所もいちいちチェックしていられません。

なので、申請が必要かの基準が設けられています。例えば、法律に定める「大規模な修繕」「大規模な模様替え」は確認申請が必要です。(戸建住宅等の4号建築物除く)

何をもって、大規模とするか?
条文には「主要構造部の一種以上について行う過半の修繕・模様替え」とあります。(主要構造部=壁、柱、床、はり、屋根又は階段

ただ、この「過半」の考え方が難しい。
・例えば、外壁全てのサイディングを交換する場合、建物の荷重を支える部分には手をつけていないが、これは壁の過半の修繕か?
・屋根の瓦だけを葺き替える場合は?
・カバー工法により、既存建物の表面に何か付け足す場合は?
・建物を支える壁11箇所のうち、5箇所を除去した場合は?

この判定基準についてメモを残します。

前提:絶対の基準はない

まず結論として、絶対の基準は存在しません。

建築基準法の条文に書いてあるないようを、どう解釈し、運用するか?それは各都道府県の建築主事の判断なので、結局はケース・バイ・ケースです。

(完)

とするのは寂しいのでもう少し。
ただし、以降の内容は参考に留めていただきたい。私自身、参考程度に考えているメモです。

裁判所の判例

裁判所は、「大規模な修繕」「大規模な模様替え」をどのように考えているのでしょうか?

裁判官は建築の素人ですが、業界の人間より確実に中立的な考え、という意味でおさえておきます。

残念ながら、建築訴訟は瑕疵等に関するものが多いので、コレという判例は数少ないのですが、平成19年に東京地方裁判所が、判断した事例がありました。

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=36649

概要としては、建物をリフォームした店舗型風俗について、警察が「以降の営業は認めない」としたため、営業所側が不服を申し立てた、というもの。

背景として2つの事情があります。
・日本で売春は禁止であり、既存の店舗型風俗営業所は、営業所が同一である限り、既得権が認められ、営業継続が許されている
・確認申請を伴うような、大規模な修繕・模様替え、増改築等を行った場合、営業所は同一性を失ったと考え、取り締まりの対象となる

そのため、リフォームの内容が「大規模な修繕」「大規模な模様替え」にあたるか?が争点となりました。(風営法に関する話は以降では全て割愛します)

結果として、そのリフォームは「あたる」と判断された(その後、原告は控訴しましたが棄却されました)のですが、その理由について、該当箇所を抜粋してみます。

工事内容1
・本件建物の2階部分の床部分は、床材と根太がすべて新設され
・梁は一部が新設されて一部は従前の材料が補強された
・本件建物の壁の大部分が取り除かれた上、新たに設置された
判断
・2階床及び壁の大部分を取り外して新設したものであり、(中略)大規模の修繕」に当たる

工事内容2
・本件建物の既存の屋根の上に、材料、構造などが異なる屋根が新たに設置された
判断
・本件基準における(中略)大規模の模様替」に当たる。甲5には、「壁・屋根は既存下地を利用すること」との記載があるが、甲5は原告が工事業者に予め工事内容を指示した際の書面であり(中略)指示内容と全く同じ工事しかされなかったとは考え難く、上記認定を覆すに足りるものではない

建物の階数・構造については不明ですし、裁判にて提出された証拠写真等は私には入手不可能なので、これ以上は文面から推測するしかありません。

おそらく、RC造の壁式構造ではなかったと推察されます。リフォームの目的が耐火構造への変更であったこと、もとは土壁があった記述があること、壁の大部分を新設していることなどから、木造軸組か、あってもRC造 or 鉄骨造のラーメン構造です。

考察

→工事内容1について、床・壁の工事を大規模な修繕としたが、梁の一部新設及び補強について言及していないので、「荷重を支える部位に少しでも手をつければ、即座に大規模」と判断される、ということはない
→「2階床の大部分」の修繕が大規模な修繕と解されている(2階建てだとしても、2階床の大部分が、建物全体の床の過半になるとは考え辛い)ことから、必ずしも建物全体に対する床面積の比率で判断するわけではない
→既存の下地が残っているか、が考慮されたことから、下地より上の化粧材については、剥がして新しくしても問題ない
→ただし、既存の建物そのままに、新しい材料を被せる場合でも、材料・構造ともに異なるものを新たに設置した場合は大規模の模様替え

ただこの裁判は、営業所が風営法改正時点と比較し、同一性を保っているかが判断できれば十分だった事情もあり、多少の判断ミスで判決が揺らぐことはないと考えられるので、目安としてよいかには疑問が残ります。

都道府県毎の取扱い

前提にて、運用基準は都道府県毎に異なる旨を書きました。そして、運用基準は県の建築課等が公表しています。

例えば、冒頭の疑問の一つ、「屋根の瓦のみを葺き替える場合」について
鳥取県土木部建築課が発表している資料では、
屋根の吹き替え、防水工事に係る大規模の修繕の取り扱い」によると

・下地をつつかない外壁の仕上げ材の修繕は申請不要
・主要構造部は、下地と仕上げを含めた全体を指すと考えられるが、仕上げ材の修繕は主要構造部の一部の修繕で、そのものの修繕とは言いがたい

という判断。

「カバー工法により、表面に何か付け足す場合」について
愛知県建築基準法関係例規集の「基準総則」によると

・カバー工法は、荷重増が伴うため、構造計算の必要があるが、原則として新しい屋根か外壁が構成されなければ申請不要

という判断。

ただ、都道府県毎にどういった違いがあるのか?
一つのケースについても、基準に記載している県、していない県があると考えられます。

印象としては、先の裁判所の判例は、役所の運用よりも厳しい感じですが、サンプルが少なすぎるので、なんとも言えないところです。

確実に言えることは、
「仕上げ材の変更程度では大規模にならない」
程度のものでした。

まとめ

はっきりと言って、使える知識とは言い難いです。

ただ、建築基準法のこの「主要構造部の一種以上について行う『過半』」というのが、基準が曖昧で、素人が自主判断できる領域にない、というのはわかりました。

おそらく、私と同じ疑問を抱いた人はいたのでしょうけど、多くの人が「ケース・バイ・ケース過ぎる」と、私と同じ結論に至ったのだと思います。

「工事内容を役所に見せて、上に判断を仰ぐ」ことが、手っ取り早くコストパフォーマンスの良い、現実的な選択肢だということ。裁判所の判例よりも、県の建築課の方たちがどう働いて、それぞれの案件をどう捌いているか、アンケート調査したほうが、いい知見が得られるのかもしれません。

 

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