単語の真実「LDK」

建築の世界には、数え切れないほどの用語が有ります。
その用語の中には、ちょっとしたトリビアがあるものも少なくありません。
私が知った用語のトリビアをご紹介する、「単語の真実」。

今回は「LDK」についてお話します。


LDK
意味:リビング・ダイニング・キッチンが仕切りなく、一体になった空間
Living+Dining+Kitchen の頭文字をとったもの

 

もう日本人で知らぬ人のいなくなった単語ですが、意外なことにこれ「和製英語」の一つです。アメリカで不動産屋にLDKといっても通じません。

「洋式の間取りなのにどうして?」

実はLDKは、洋式の間取りとすら言えないシロモノ。LDKは日本で誕生した、洋式ではなく、いわば「日本式洋風建築」。そしてこのLDK誕生には、戦後の日本において、住宅不足と戦い続けた、熱き男たちのドラマがありました。

以下、プロジェクトX風。
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デデンデンデデン
デデンデンデデン(music: 地◯の星)

ー戦後 日本が陥った 未曾有の住宅不足ー
ー誰もが東京の寒空に 放り出されたー
ー課せられたのは 420万戸もの 生活スペースー
ー限られた空間 新しい間取りが 必要となったー
ー西山夘三の寝食分離論とともに 立ち上がった 建築家達ー
ー世紀の瞬間 日本人が目にした 前代未聞の集合住宅ー

「51C型 造り上げろ 夢の公営住宅大作戦」

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ちょっと大袈裟に演出してみました。が、LDKの原型が誕生した経緯はこのような具合です。戦後の日本は、多くの都市が空爆に見舞われて、住宅不足に悩まされていました。数にして420万戸。終戦時の世帯数が約1500万戸ですから、どれだけ膨大な数の住宅が必要になったか、わかろうというものです。

国は対策として住宅ローンの制度を整えたほか、数多くの公団住宅を建てていきました。この辺りの流れはまた別記事にて詳細に記述しますが、この公団住宅の設計では、とかく限られた面積の中でより多くの人が快適に生活できることが求められました。

遊びが全く許されないため、新しく汎用性の高いプランが必要。色々な建築家がプランを作ったのですが、最終的に採用されたのは東京大学の吉武泰水助教授が提案した案でした。1951年に計画された公営住宅標準設計で、A・B・Cと3案あった内のCだったため「51C型」と呼ばれます。(1970年頃までの標準になりました)

このプランは日本の伝統的な間取り、例えば縁側ですとか、をバッサリとカットして、空間の合理化を推し進めた結果生まれた、ある種の苦肉の策でした。

ではDK(ダイニングキッチン)は?

ダイニングキッチンという言葉が登場するのは1956年の公団住宅。発明したのは、公団の初代住宅計画部課長の尚明(ショウアキラ)という方でした。当時の台所というのは、基本「建物の北側に位置する、玄関から最も離れた、ジメジメした場所」だったのですが、彼は台所をあえて「日光の当たる南側、玄関側」に持ってくるという奇想天外なプランを打ち出しました。

南側は気温が高い分、食べ物が腐りやすく臭いやすい。玄関からも近いとなると、今までの台所では不潔な印象を与えてしまう。そこで、清潔な印象の「キッチン」をつくるため、ステンレスのシンクを開発するなど数々の工夫を凝らしていくこととなります。

この辺りの経緯は、本当にプロジェクトXに取り上げられてます。興味のある方はKindleにて108円で売ってますので読んでみてはいかがでしょう?

ちなみにLDKが登場するのは1967年。だんだん暮らしが豊かになって、住宅公団が「DK+L」を標準設計としてから。51C型に始まって、公私の空間の区別が重要視されるようになり、「家族の団欒の場」と「家族の人数分の寝室」で構成された「nLDK型」が一般に馴染んでいったわけです。

まとめ

「LDK」は戦後、「住宅を少しでも効率的に、広く使いたい」という思いから生まれた、日本人の智慧の結晶だった

参考:
山崎古都子(2012)「脱・住宅短命社会―住居管理と中古住宅市場の課題」、サンライズ出版
金井恭秀「住宅供給モデルの変遷と今日的課題についての考察~住宅供給プロセスのinnovationという観点から~」、[online]http://www.jyuseikatsu.jp/backnumber/imgs/20060501_03.pdf
NHK「プロジェクトX」制作班 (2012)『「妻へ贈ったダイニングキッチン」~勝負は一坪・住宅革命の秘密 ―執念の逆転劇 プロジェクトX~挑戦者たち~ Kindle版』、NHK出版
林新太郎(2015)「公団住宅からUE賃貸住宅まで、60年の住まいづくり」、[online]http://www.ur-net.go.jp/rd/04_tech/report2015/2015_02.pdf

次回は戸建住宅購入のスローガン、「一国一城の主」についてご紹介します。

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