書評<「正直不動産」勝手に解説!その1ー媒介契約ー>

千の言葉の中に、真実はたった三つってことだ
(「正直不動産1」より)

私は近頃、建築・不動産のマンガを集めているのですが、先日ユーモラスに「不動産仲介業」の実態を描いているマンガを見つけました。

そのタイトルは、「正直不動産」

家や不動産に手を付ける前に、すべての人に呼んで欲しい一冊です。が、コミカルに描く分、用語の解説が少なかったり、素人目にも結構大げさに描写されている部分があると感じました。

というわけで今回、正直不動産に登場した内容を、勝手に解説してみようと思います。第一回の今回のテーマは「媒介契約」です。


正直不動産(1) (ビッグコミックス)

目次
1.「正直不動産」あらすじ
2.三種の媒介契約
3.まとめ

1.「正直不動産」あらすじ

正直不動産は、住みたい街ランキングで有名なかの吉祥寺で、駅から徒歩5分の位置にある「登坂不動産」を舞台にしたブラック・コメディ。

登坂不動産の営業マンとして活躍する主人公「永瀬財地」は、嘘を巧みに織り交ぜた営業トークで数多くの契約を成立させていた。

ところがある日、彼は取引中の土地に不気味な祠があるのを見つける。客の購買意欲に影響すると彼はその祠を壊してしまうのだが、以来彼は嘘を、社交辞令すら言えなくなってしまう。

まともな営業ができなくなってしまった彼は、嘘だらけの不動産業界で果たして生き残っていくことができるのだろうか?

登場人物

永瀬財地
登坂不動産の敏腕営業マン。ある事件を機に嘘がつけなくなってしまう。

月下咲良
カスタマーファーストが信条の新人営業マン。かなりバカ正直な性格で永瀬にたびたび呆れられている。


桐山貴久
登坂不動産に新しく転職してきた営業マン。嘘がつけた頃の永瀬同様の考えを持つ、いかにも不動産の営業マンらしい人物。

2.三種の媒介契約

3話に登場する笹原夫婦。この2人は、持っている建物の売却のため、登坂不動産を訪れます。

なんでもこの夫婦、不動産の売却は初めてで、売却の相談に来たのも登坂不動産が最初とのこと。そのため永瀬は、売買の前に必ず結ぶ「媒介契約」の話をします。

「媒介契約」解説

媒介契約:不動産業者に売買の仲介を依頼する際に必ず締結する契約。宅建業法にて義務付けられている。業務の仕様や仲介手数料等を明確にし、トラブルを未然に防ぐ目的で結ぶ(参考:全日本不動産協会「不動産会社との媒介契約」)

媒介契約とは上記の通り、不動産売買で最初に結ぶ契約です。ニーズに合わせて以下の3種類の契約があります。

1.専属専任媒介契約
依頼者が依頼した不動産業者以外の誰かと契約できない契約

2.専任媒介契約
依頼者が依頼した不動産業者以外の不動産業者と契約できない契約

3.一般媒介契約
依頼者が依頼した不動産業者以外にも、いくつでも重ねて依頼できる契約。仲介手数料は最終的に契約を成立させた不動産業者のみが受け取る


基本的に、上にいくほど不動産屋・顧客共に縛りが強く、下にいくほど縛りが弱くなります。「専属専任」と「専任」はよく似ていますが、ただ1点、「自己発見取引」が出来ない点で、専属専任のほうがやや縛りが強い契約になります。

自己発見取引
売主が自力で購入希望社を見つけて直接売却する取引

一般的には、「専属専任」や「専任」は早く買い手が見つかるが安くなり、「一般」は手間も時間もかかるが高く売れる、とされます。ケース・バイ・ケースなのであまり当てにならない話のですが。

「高く売れるに越したことは」と話す笹原夫妻に、嘘がつけない永瀬は「嘘がつけるなら専属専任媒介契約を勧めるのに」と自分に呆れながら、一般媒介契約を勧めます。

理由は、一般媒介契約にはタダ働きの恐れがあるから。「散々内見や打合せに付き合わされた挙げ句、結局他社で決めちゃった」なんてことになれば、目も当てられません。そこで現れたライバル桐山が、笹原夫妻に口八丁で「専属専任媒介契約」を結ばせてしまいます。

桐山は、笹原夫婦のマンションを囲い込み、自らの手で買い手を見つけ、3900万で両手を達成するのでした。

「専属専任か一般か?」解説

囲い込み
不動産仲介において、自社利益のために、他業者から買い手についての連絡が入っても全て断る行為
両手
不動産仲介において、一つの業者が売り手と買い手の両方を見つけて、取引を成立させること。単純に利益が倍になるため、不動産業者は可能な限り両手の成立を目指す


不動産仲介において、どの媒介契約がいいのかは大きなテーマです。

永瀬や桐山は断然「専属専任」を勧めていますが、実際の取引で多いのは「専任媒介契約」で、「専属専任」は不動産業者も嫌ってたりします。

一般財団法人「土地総合研究所」のアンケート調査によると、「専属専任はほぼ0%」という業者も多いのです。例外的に5人以下の小さな不動産屋では専属専任を好むところもありますが。実は専属専任は「売り手への業務報告」の数が専任の倍になるデメリットがあるので、多くの物件を抱えている業者にとっては面倒なのでしょうね。自己発見取引が成立するのは珍しいことですし。


加えて「一般媒介契約」が顧客思いか、という点も疑問だったりします。桐山の「一般媒介契約は優先度の低い案件」という発言は事実なので、5社も6社もといくつも契約を結ぶと、どの業者にも無視されて塩漬けになる危険が高くなります。

塩漬け:株や土地などの評価額が下がり,売れずに保有していたり,値が上がるまで持ち続けている状態(出典: Weblio辞書)

不動産を持つ人の多くは多額のローンを抱えているわけで、塩漬けになってお金が返せなくなるのは何より恐ろしいこと。さっさと売却できることも大事なわけです。

「じゃあ専任媒介契約なら素早く買い手を見つけてくれるの?」というと、これもまた疑問。作品内でも言及されていますが、不動産業界の慣習として「囲い込み」というものがあり、不動産屋が自分で買い手を見つけるまで延々と待たされることもあるからです。「囲い込み」があると「塩漬け」のリスクはぐーんと高まるわけです。

結局は「如何にして誠実に仕事をしてくれる不動産屋に依頼するか」に集約されるといっていいでしょうね。信用できる業者がサッパリ分からないのであれば、「一般媒介契約を2社(多くても3社)に絞って締結する」のが無難かもしれません。

 

3.まとめ

・媒介契約は不動産を売却する時に、最初に必ず結ぶ契約
・「専属専任」「専任」「一般」媒介契約の中で、多いのは専任媒介契約。専属専任はさほど使われない
・どの媒介契約がベストかは状況により異なるが、結局は依頼した業者が誠実かどうかによる
・どの業者も信用ならないなら、2社程度と一般媒介契約を締結すると良いだろう

次回は「敷金返還請求」について取り上げます。

おすすめ度: ★★★★

広告

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください